『貞丈雑記』十四 家作

一、座鋪の上座に、床と云う物を作る事、上古になき事也、鎌倉の頃以来の事歟、尊氏公、夢窓国師に帰依ありしより、将軍家代々、禅家の国師を師として御受衣ありし也、〈受衣とは、弟子になりて、僧衣を受て著する也〉、然る間禅法世にはやり、出家の風俗武家に移りたる事多し、床も仏家にての仏壇也、本尊を置く所也、床に仏絵をかけ、三具足をわかざる事など、皆出家の風也、書院と云も仏書を講ずる所也、又食物も精進物をば魚類よりも、賞翫とし、飯のさばをとることなどの事、なべて皆出家方の風俗移りたる也、されば其の時代には、禅僧は勿論すべて出家をば殊外敬ひしなり、