誓詞文言の事(荻生徂徠『政談』東洋文庫811)

一、誓詞の文言に、別ては伊豆箱根両所権現とかく事、文盲の至也。是は貞永式目にあるを書礼者が手本に出したれば、それを何の僉議もなく用いたる也。貞永式目は、北条家、公事裁判に依怙をせまじきという誓文也。北条の在所は伊豆也。鎌倉は箱根に近し。故に伊豆箱根と書たる也。今は国隔り伊豆箱根の権現をば平生信向もせぬに、日本国中にて何方にても如此かく事、埒もなき事也。其所にて人の第一に崇敬する神社を用ゆべき事也。