「柳」

『有職故実大辞典』(吉川弘文館)

 装束の色目の一つ。『満佐須計装束抄』の女房装束の色目としては「おもてはみなしろくて、うらみなうすおを、くれなゐのひとへ、又うらにほひておもてはしろくて、うらはしたへこくにほふ」となっている。『女房飾抄』では「柳(表しろく、うらは青)、くれなゐのひとへ、桜、もえぎのうわぎ、あかいろの小うちぎ」となっている。男装の下襲や狩衣の合色も表白裏青であり、下襲は宿老の着用(『飾抄』)となっているが、『雁衣鈔』では「若モ老モ着之」とある。また四季を通じて用いたと『雁衣鈔』にはあるが、『西三条装束抄』では冬から春に至る間となっている。なお「黄柳」の下襲は表が練色のごとき薄黄、裏は濃黄で、砧で打って艷を出したものとなっている。

『平安時代史事典』(角川書店)

襲の色目。表白瑩{みがき}、裏青。男子は幼老通用。冬から春。正月から四月。四季通用などの諸説があり、「年少人不可着。自五節至三月」(『後照念院殿装束抄』)、「老卿用之」(『深窓秘抄』)とある。「面白裏青、自冬至春」(『西三条装束抄』)、「表裏薄青」(『藻塩草』)、「表は綾の白瑩、裏は青打也。或は裏表張ても着す」(『桃花蘂葉』)との諸説がある。また装束の襲の色目としては「おもてはみなしろくて。うらみなうすあを。くれなゐのひとへ。又うらにほひておもてはしろくて。うらはしたへこくにほふ」(『満佐須計装束抄』)とある。『宇津保』楼上上、『栄花』三六、『夜の寝覚』一、『枕草子』二六二、『紫式部日記』等にも見える。『源氏』初音に「柳は、げにこそすさまじかりけれ」とある。